第U章 現行価格表示の1970年GNP

    1.概  説

    2.家計部門勘定

      (1)収入の部 (2)支出の部

    3.公共部門勘定

      (1)収入の部 (2)支出の部

    4.最終需要別GNP

    5.所得種類別GNP

    6.発生部門別GNP

      (1)GNP (2)賃金 (3)その他の収入と帰属収入 (4)社会保険控除 (5)減価償却

      (6)利潤 (7)取引税その他の間接税 (8)補助金







 



    1.概  説

    本章では,第T章1.(1)で示した4つのステップのうちの第一のステップ,すなわち現行価格(established prices)による1970年GNPの推計方法を解説する。ここでいう現行価格とは,次のような価格を指す。基本的には,@ソ連政府によって決定された公定価格であるが,その他に,Aコルホーズ市場のように,公式に認可された市場価格,B公式統計に示されたような政府サービスのコスト,を含むものである(CIA,1975,p.2)。1970年のGNP推計は,基本的にCIA(1975)でなされている。JEC(1982)は,全体としてそれを踏襲しており,その後得られた情報などによって,CIA(1975)に若干の修正を加えたにとどまる。以下ではこの二つの文献によって,実質GNP推計の基準年となる1970年の現行価格表示のGNPの計測について解説する。

    このステップは,形式的には次の三つのサブステップからなる。

    @四つの会計単位,すなわち,独立採算企業,予算機関,コルホーズ,家計のそれぞれについて,収入項目と支出項目を計算し,それをもとに二つの勘定,すなわち家計部門勘定,公共部門勘定を作成する。

    A作成された二つの勘定をもとに,最終需要別,および所得タイプ別のGNPを計算する。もちろん両者は一致する。

    B所得タイプ別のGNPとその他のデータから,発生部門別のGNPを計算する。これも,前の二つのGNPと一致する。

    前に説明したように,CIAは発生部門別のデータから計算されたGNP総額の信頼性が最も高いとしている。したがって実際には,これを1970年におけるGNP総額としており,他のGNPは,それぞれの「統計的不突合」の項目等で発生部門別GNP総額に一致するように調整されていると考えられる。以下,各サブステップについて説明しよう。







 
2.家計部門勘定


    (1)所得の部

    表B−1は,CIAが推計した1970年におけるソ連家計部門の所得と支出である。以下,CIA(1975),JEC(1982)に基づき,各項目の計算方法とデータの出所について,簡単に説明していこう。まず,所得の部である。

    1.国家賃金(1,320億3,200万ルーブル)は,賃金労働者数(90,186,000人)と平均年間賃金(1,464ルーブル)との積である。両者とも,Narkhoz (ソ連の経済統計年鑑Narodnoe khoziaistvo SSSR v 19xx g. を,このように略記する)からとられた。

    2.農業からの家計純所得,a.コルホーズによる貨幣賃金支払,(1)コルホーズ員への支払(140億4,000万ルーブル)は,Narkhoz から得ることのできる現物も含むコルホーズ員への賃金支払(150億ルーブル),およびV.N.Zhurikov & V.I.Solomakhin,eds.,Spravochnik po oplate truda v kolkhozakh によるその貨幣支払部分の比率(93.6%)から計算されている。

    2.a.(2)雇用労働者への支払(4億1,300万ルーブル)は,Narkhoz およびTsSU,Strana sovetov za 50 let から得られた雇用労働者数(500,000人)に,彼らがコルホーズ員の平均賃金(826ルーブル)を受け取ると仮定してそれを掛けることによって得られた。

    2.b.農産物販売純所得(83億1,400万ルーブル)は,農産物販売総所得(92億3,800万ルーブル)から,農業家計による生産資材・サービスの購入(9億2,400万ルーブル)を控除することによって推計された。農産物販売総所得は,国家調達機関・ソフホーズコルホーズ商業機関への販売(38億6,900万ルーブル),コルホーズ村外市場販売・委託販売(43億6,900万ルーブル),およびコルホーズへの家畜の販売(10億ルーブル)の三者の合計である。これらの計算に際して,Narkhoz,Sel'skoe khoziaistvo SSSR,またVoprosy ekonomiki 等の2冊の雑誌論文,さらにI.F.Cherniavskii,Realizatsiia sel'skokhoziaistvennoi produktsii i effektivnost' proizvodstva 等の4冊の著作からデータが得られた。

    2.c.農業現物純所得,(1)現物消費(183億4,700万ルーブル)は,8種類の農産物,すなわち穀物,ジャガイモ,野菜,ヒマワリの種,ミルク,肉,羊毛,卵のそれぞれについて,現物消費された数量と適当な価格を推計し,両者を掛け合わせることによって全体額が計算されている。現物消費額は,穀物3億900万ルーブル,ジャガイモ24億9,000万ルーブル,野菜5億1,700万ルーブル,ヒマワリの種9,400万ルーブル,ミルク46億900万ルーブル,肉67億200万ルーブル,羊毛1億1,200万ルーブル,卵16億7,900万ルーブル,その他18億3,500万ルーブルである。データの出所となる文献は,Narkhoz,Sel'skoe khoziaistvo SSSR,Voprosy ekonomiki,F.T.Zemlianskii,Ekonomika podsobnykh predpriiatii i promyslov v kolkhozakh をはじめ,26の年鑑,著作,雑誌論文に及ぶ。

    2.c.(2)現物投資(5億9,500万ルーブル)は,家畜在庫の純増である。これは,牛,豚,羊・山羊,家禽の増加数に,それぞれ適当な評価価格を掛けて算出されている。データの出所は,Narkhoz,Sel'skoe khoziaistvo 等である。

    3.軍の所得(65億8,000万ルーブル)については,CIAによる推計としか書かれていない。

    4.その他の貨幣所得と統計的不突合,a.私的貨幣所得,(1)建設による私的稼得(2億9,000万ルーブル)は,次のようにして推計されている。Narkhoz から得られる国家による民間住宅建設・修理サービス額(3億9,470万ルーブル)から,V.I.Dmitriev,Metodologicheskie osnovy prognozirovaniia sprosa na bytovye uslugi によって得られる企業へのサービス額(1,970万ルーブル)を控除した額(3億7,500万ルーブル)が,国家による家計への建設サービス額となる。このうちの半分を新規建設額(1億8,800万ルーブル,残りの半分は修理額とする)と考え,その金額を,Narkhoz から得られる民間住宅建設総額(16億3,600万ルーブル)から控除する。これが,私的に提供された建設サービス総額(14億4,800万ルーブル)である。この金額の40%を原料費(5億7,900万ルーブル)と仮定すると,残余の60%が労働支払(8億6,900万ルーブル)となる。このうちの三分の一を,建設による私的稼得(2億9,000万ルーブル)と仮定し,残りの三分の二は,下記6.持ち主が提供した建設サービスの帰属価値(5億7,900万ルーブル)とする。

    4.a.(2)サービスによる私的稼得,(a)住宅修理(8億400万ルーブル)は,@住宅修理総額(12億5,800万ルーブル)から,A国家によって提供された修理サービスの購入(1億8,700万ルーブル)と,B私的に提供された修理サービスに使われた原料費(2億6,700万ルーブル)を控除することによって得られる。@住宅修理総額は,Narkhoz,W.S.Smith,Housing in the Soviet Union−Big Plans,Little Action で得られる年央の住宅空間ストック(都市部公共住宅,6億9,600万平米;都市部私的・農村部住宅,11億2,500万平米)と,Voprocy ekonomikiのB.Kolotilkin 論文から得られる住宅空間ストック1平米あたりの修理支出額(都市部公共住宅,1ルーブル;都市部私的・農村部住宅,0.5ルーブル)との積として推計される。

    A国家によって提供された修理サービスの購入は,4.a.(1)建設による私的稼得の推計途中で得られた。

    B私的に提供された修理サービスに使われた原料費は,建設資材の家計への販売総額から,私的に提供された新規住宅建設において使用された原料費と,国家によって提供された民間住宅建設・修理サービスにおいて使用された原料費を控除することによって得られる。控除項目のうちの前者は,4.a.(1)建設による私的稼得を求める途中で,既に5億7,900万ルーブルと推計されている。後者については,やはり4.a.(1)建設による私的稼得の計算途中の,国家によって提供された対家計住宅建設・修理サービス(3億7,500万ルーブル)がそれであると仮定する。また建設資材の家計への販売総額は,Narkhoz から得られる建設資材総販売額(15億5,000万ルーブル)と,Vestnik statistiki 所収の A.Zaitseva and G.Moroz 論文から得られる建設資材の諸機関による購入(3億2,900万ルーブル)の差額として,12億2,100万ルーブルと求めることができる。

    以上で求めた@,A,Bから,4.a.(2)(a)住宅修理を求めることができる。

    4.a.(2)(b)その他の私的修理・個人日用サービス(8億3,600万ルーブル)は,私的に提供されるサービスに対する家計の総支出から,私的に提供される住宅修理サービスを差し引いた額の90%と推定された。前者の,私的に提供されるサービスに対する家計の総支出は,Ekonomicheskie nauki 所収の V.Azar and I.Pletnikova 論文から,20億ルーブルとされた。後者の私的に提供される住宅修理サービスは,前項4.a.(2)(a)住宅修理における,@マイナスA,すなわち10億7,100万ルーブルである。

    4.a.(2)(c)私的な部屋の賃貸(4億8,400万ルーブル)は,前掲 V.Azar and I.Pletnikova 論文から推計された。

    4.a.(2)(d)教育(4億7,000万ルーブル)は,私的教育サービスに対する家計支出に等しい。この金額は,Narkhoz から得られる教育部門国家賃金の5%と仮定された。

    4.a.(2)(e)保健(2億5,000万ルーブル)は,私的保健サービスに対する家計支出に等しい。この金額は,Narkhoz から得られる保健部門国家賃金の5%と仮定された。

    4.b.その他の貨幣所得と統計的不突合(74億6,400万ルーブル)は,後に計算される9.総所得と,項目1,2,3,4.a.,5,6,8,の合計の差額として求められた。

    5.帰属純家賃(10億8,000万ルーブル)は,都市部私的・農村部住宅帰属総家賃(16億4,200万ルーブル)から,同住宅居住者によって購入された修理サービス(5億6,200万ルーブル)を控除することによって推計された。帰属総家賃は,Narkhoz および前掲W.S.Smith論文から得られる都市部私的・農村部住宅面積と,I.N.Shutov,Lichnoe potreblenie pri sotsializme から得られる国営住宅1平米当たりの平均家賃(1.46ルーブル)との積として得られた。また,都市部私的・農村部住宅居住者による修理サービス購入金額は,4.a.(2)(a)住宅修理の項目で,@住宅修理総額を求める際に計算された。

    6.持ち主が提供した建設サービスの帰属価値(5億7,900万ルーブル)については,4.a.(1)建設による私的稼得の項で説明した。

    7.経常的に稼得された総所得収入(1,925億7,800万ルーブル)は,1−6の項目の合計である。

    8.移転受取,a.年金(223億ルーブル)は,Narkhoz から直接得られた。

    8.b.給付金(13億ルーブル)は,Narkhoz から直接得られた。

    8.c.利子所得(10億3,500万ルーブル)は,貯蓄預金口座の推定利子額(9億3,500万ルーブル)と,Narkhoz から直接得られる予約債券のローン・サービス(1億ルーブル)の合計額である。前者は,Narkhoz から得られる貯蓄預金口座残高(424億9,800万ルーブル)に対して2.2%の利子がつくとして計算された。2.2%という利子率は,Vestnik statistiki 誌とNarkhoz とから推定される1965年の利子率と同様であるとして適用された。

    8.d.家計への純新規銀行ローン(-3,400万ルーブル)は,Narkhoz から得られる1970年末と1969年末との長期ローン貸出残高の差額である。

    8.e.消費者協同組合への利潤分配(2,700万ルーブル)は,Narkhoz から得られる消費者協同組合純利潤(13億2,100万ルーブル)の2.02%として計算された。この2.02%という比率は,P.I.Liuskon,ed.,50 let sovetskoi potrebitel'skoi kooperatsii から得られる1962-65年の比率をそのまま適用したものである。

    9.総所得(2,172億600万ルーブル)は,7,8の合計である。







 
2.家計部門勘定


    (2)支出の部

    支出の部に移る。

    1.消費財小売販売,(a)国家・協同組合・委託販売(1,410億9,600万ルーブル)は,国家・協同組合・委託販売総額から,@諸機関に対する販売,A農業家計に対する生産財の販売,B家計への建設資材の販売,C灯油,D映画レンタル,E委託販売およびレンタル機関への販売,F商用旅行支出,G小売販売に含まれるサービス,の8項目を控除することによって得られた。

    国家・協同組合・委託販売総額(1,552億800万ルーブル)は,Narkhoz から直接得られる。

    @諸機関に対する販売(71億7,700万ルーブル)は,V.I.Nikitin,op.cit. から得られた。

    A農業家計に対する生産財の販売(4億6,200万ルーブル)は,所得の部,2.b.農産物販売純所得,を推計する際に得られた生産資材・サービスの購入(9億2,400万ルーブル)の50%として推定された。

    B家計への建設資材の販売(12億2,100万ルーブル)は,2.a.(2)修理,および5.a.私的住宅建設,に含まれるので,控除される。この金額は,Narkhoz から直接得られる建設資材総販売額(15億5,000万ルーブル)から,Vestnik statistiki 所収の前掲 A.Zaitseva and G.Moroz 論文から推計される諸機関によるその購入(3億2,900万ルーブル)を差し引いた額として計算された。

    C灯油の購入(1億3,100万ルーブル)は,2.b.(1)公益,に含まれるので,控除される。この金額は,Narkhoz から直接得られる。

    D映画レンタル(1億9,500万ルーブル)は,2.b.(5)レクリエーション,に含まれるので,控除される。Planovoe khoziaistvo 所収の V.Rutgaizer 論文から推計された。

    E委託販売およびレンタル機関への販売(6億9,900万ルーブル),および商用旅行での食事代を意味するF商用旅行支出(3億100万ルーブル)は,両者合計10億ルーブルとしてやや恣意的に決定された。このうち,F商用旅行支出は,Narkhoz から得られる公共料理施設販売額(150億3,300万ルーブル)の2%に等しいとして推定された。

    G小売販売に含まれるサービス(39億2,600万ルーブル)は,Gosplan SSSR,Metodicheskie ukazaniia k sostavleniiu gosudarstvennogo plana razvitiia narodnogo khoziaistvo SSSR によって「生産的サービス」とされている(したがって小売販売額に含まれている)次の9種類のサービス,すなわち靴修理,洋服修理・オーダーメイド,ニットウェア修理,耐久消費財修理,家具修理,ドライクリーニング,洗濯,写真サービス,その他の生産的サービス,の合計額である。これらのデータは,直接Narkhoz から得ることができる。

    このようにして得られた1.a.国家・協同組合・委託販売を,食料,非耐久財(本稿では,soft goodsをこのように訳す),耐久財の3種類に分類しなければならない。この手続は,基本的に上記手続のくり返しであるが,国家・協同組合・委託販売総額および8つの控除項目それぞれを,3種類の財に分解し,それら3種の財ごとに総額から控除項目を差し引いて,所望の,家計の食料,非耐久財,耐久財別の支出額を求める。

    まず,国家・協同組合・委託販売総額(1,552億800万ルーブル)を,3種類に分解する。食料販売総額(889億4,800万ルーブル)は,食料販売額(861億6,800万ルーブル)とたばこ販売額(27億8,000万ルーブル)の合計である。非耐久財販売総額は,布地,洋服,ニットウェア,靴,洗濯石鹸,合成洗剤,石鹸・香水,小間物,マッチ,灯油,ノート・紙,出版物の合計として450億9,200万ルーブルと求めることができる。また,耐久財販売総額は,家具・カーペット,金属食器,ガラス食器,スポーツ用品,ラジオ,楽器,玩具,自転車・バイク,時計,宝石,電気製品,ミシン,自動車,その他家庭用品の合計として,148億5,600万ルーブルと求めることができる。この段落のデータは,すべてNarkhoz から直接得ることができる。その他・分類不明財として,63億1,200万ルーブルが残る。

    @諸機関に対する販売(71億7,700万ルーブル)を,3種類の財に分類する。食料については,前掲 Zaitseva and Moroz 論文から得られた,諸機関への販売総額の63.3%という数字から,45億4,300万ルーブルと推計された。残余の36.7%,すなわち26億3,400万ルーブルの中で,確認できた非耐久財のシェアが26.7%であるという Zaitseva and Moroz 論文から,7億300万ルーブルという数字が推計され,これに未確認部分アローワンスの3億4,900万ルーブル(上記非食料販売額26億3,400万ルーブルのうち未確認部分の50%)を加えた10億5,200万ルーブルが,諸機関に対する非耐久財販売額とされた。耐久財についても同様に,Zaitseva and Moroz 論文から34.3%というシェアと,未確認部分アローワンス(3億5,000万ルーブル)とから,12億5,300万ルーブルと推計された。3種類の消費財に属さないその他の財として,3億2,900万ルーブルが残る。

    A農業家計に対する生産財の販売,およびB家計への建設資材の販売は,全額がその他の財に分類されると考えられる。

    C灯油は,非耐久財,D映画レンタルは,その他の財に属すると考えられる。

    E委託販売およびレンタル機関への販売は,主として,中古車,器具,家具,宝石等から成ると考えられるので,80%(5億5,900万ルーブル)が耐久財,20%(1億4,000万ルーブル)が非耐久財に分類されると推定された。

    F商用旅行支出は,上述したように,全額が食料である。

    G小売販売に含まれるサービスは,非耐久財と耐久財とに分類されると考えられる。非耐久財に区分けできるのは,靴修理,洋服修理・オーダーメイド,ニットウェア修理,ドライクリーニング,洗濯,およびその他の生産的サービスの50%,合計30億8,700万ルーブルである。また,耐久財に区分けできるのは,耐久財修理,家具修理,写真サービス,およびその他の生産的サービスの50%,合計8億3,900万ルーブルである。

    国家・協同組合・委託販売総額のうちのその他・分類不明財(63億1,200万ルーブル)から,上記8種類の控除項目のその他の財の合計22億700万ルーブルを引いた残りの41億500万ルーブルは,実際に家計に販売された消費財と考えられるが,明確な判断基準がないので,それぞれ半額が非耐久財と耐久財に割り振られた。この結果,

    1.a.(1)食料は,総額(889億4,800万ルーブル)から,諸機関への販売(45億4,300万ルーブル)および商用旅行支出(3億100万ルーブル)が控除されて,841億400万ルーブルとなった。

    1.a.(2)非耐久財は,総額(450億9,200万ルーブル)から,諸機関への販売(10億5,200万ルーブル),灯油(1億3,100万ルーブル),委託販売およびレンタル機関への販売(1億4,000万ルーブル),小売販売に含まれるサービス(30億8,700万ルーブル)を控除し,さらに分類不明分の20億5,200万ルーブルを加えて,427億3,400万ルーブルとなった。

    1.a.(3)の耐久財は,総額(148億5,600万ルーブル)から,諸機関への販売(12億5,300万ルーブル),委託販売およびレンタル機関への販売(5億5,900万ルーブル),小売販売に含まれるサービス(8億3,900万ルーブル)を控除し,さらに分類不明分の20億5,300万ルーブルを加えて,142億5,800万ルーブルとなった。

    1.b.コルホーズ村外市場販売,(1)食料(36億1,700万ルーブル)は,同市場総食料購入額(39億6,600万ルーブル)から,同市場における諸機関の食料購入額(3億4,900万ルーブル)を差し引くことによって求められた。前者は,Narkhoz から得られる国家・協同組合機関とコルホーズ市場のそれぞれが総食料購入に占める比率と,これもNarkhoz から得られる,国家・協同組合機関だけの食料購入額とから計算された。後者は,Narkhoz や前掲 Zaitseva and Moroz 論文から推計されるコルホーズ村外市場における諸機関購入額(3億6,500万ルーブル)の95.7%(この比率も,Zaitseva and Moroz 論文による)として計算された。

    1.b.(2)非耐久財(2億1,800万ルーブル)は,コルホーズ村外市場における家計の総購入額(38億3,500万ルーブル)と,1.b.(1)で求めた同市場における家計の食料購入額(36億1,700万ルーブル)との差として計算された。前者は,Narkhoz から直接求められるコルホーズ村外市場総販売額(42億ルーブル)と,1.b.(1)の途中で求められた諸機関による同市場での購入額(3億6,500万ルーブル)の差として推計された。

    2.消費サービス,a.住宅,(1)総家賃(27億3,300万ルーブル)は,@都市部公共住宅現金家賃,A住宅協同組合員によるメインテナンス費支払,およびB都市部私的・農村部住宅帰属総家賃の合計額である。

    @都市部公共住宅現金家賃(10億1,600万ルーブル)は,所得の部4.a.(2)(a)住宅修理,の項で得られた都市部公共住宅面積(6億9,600万平米)に,I.N.Shutov,op.cit. によって得られる1平米あたりの家賃の年額(1.46ルーブル)を掛けることによって得られる。

    A住宅協同組合員によるメインテナンス費支払(7,500万ルーブル)は,協同組合住宅面積(2,900万平米)に,1平米あたりの費用(2.59ルーブル)を掛けて算出された。データは,いずれもW.S.Smith,op.cit. から得られた。

    B都市部私的・農村部住宅帰属総家賃(16億4,200万ルーブル)は,所得の部5.帰属純家賃,の項で得られた。

    2.a.(2)修理(6億9,600万ルーブル)は,住宅修理支出総額から,帰属家賃として勘定される都市部私的・農村部住宅居住者による修理サービス支出金額を差し引いた額として求めることができる。住宅修理支出総額(12億5,800万ルーブル)は,既に所得の部4.a.(2)(a)住宅修理,の項で計算されている。また都市部私的・農村部住宅居住者による修理支出額(5億6,200万ルーブル)も同様に,4.a.(2)(a)住宅修理,の項で計算されている。

    2.b.その他サービス,(1)公益(34億7,800万ルーブル)は,灯油購入額(1億3,100万ルーブル)と,33億4,700万ルーブルという支出額の合計額である。灯油については,既に1.a.国家・協同組合・委託販売,の項で触れている。後者の金額は,住宅・地域サービス購入額(46億ルーブル,V.E.Komarov and U.G.Cherniavskii,Dokhody i potreblenie naseleniia SSSR による)と,家計の現金家賃(10億9,100万ルーブル,上述2.a.(1)参照)およびホテル等への支出(1億6,200万ルーブル)の合計額との差額である(これらの手続は,Gosplan SSSR,op.cit. に基づく)。ホテル等への支出については,やや恣意的な推計が行われた。

    2.b.(2)運輸(54億ルーブル)は,V.E.Komarov and U.G.Cherniavskii,op.cit. の提示している金額(72億ルーブル)から,およそその25%と推定される商用旅行支出を控除した。

    2.b.(3)通信(12億ルーブル)は,V.E.Komarov and U.G.Cherniavskii,op.cit. による。

    2.b.(4)修理・個人日用(54億9,700万ルーブル)は,国家が提供する日用サービス(44億8,100万ルーブル),私的に提供されるサービス(9億2,900万ルーブル),およびその他のサービス(8,700万ルーブル)の三者の合計である。国家が提供する日用サービスについては,直接 Narkhoz から40億4,440万ルーブルと値を得ることができるが,ここから,企業による日用サービスの購入と,住宅建設・修理サービスの販売の二項目が控除されなければならない。逆に,洋服修理・オーダーメイドに使用される材料費と,ニットウェア修理に使用される材料費の二項目が加算されなければならない。これらについて,V.I.Dmitriev,op.cit. などから得たデータで調整を行って,前述の44億8,100万ルーブルという金額が得られた。

    私的に提供されるサービスは,所得の部4.a.(2)(b)その他の私的修理・個人サービス,の項目における,私的に提供されるサービスに対する家計の総支出(20億ルーブル)から,私的に提供される住宅修理サービス(10億7,100万ルーブル)を差し引いた額として算出された。

    その他のサービスは,V.E.Komarov and U.G.Cherniavskii,op.cit. などのデータから算出された。

    2.b.(5)レクリエーション(25億4,700万ルーブル)は,娯楽費(15億ルーブル,V.E.Komarov and U.G.Cherniavskii,op.cit. による),リゾート・パス等(4億4,700万ルーブル),および「非組織レジャー」(7億ルーブル)から商用旅行ホテル代(1億ルーブルと推定)を除いた金額(6億ルーブル)の,三者の合計として求められた。リゾート・パス等は,前掲 V.Rutgaizer 論文によって推定された公共保健・運動支出(5億4,200万ルーブル)から,両親の負担する保育園児費用(9,500万ルーブル)を差し引いて求められた。後者は,Narkhoz から得られる保育園児数(1,181,500人)と,Sotsialisticheskii trud 誌から得られる保育園児1人あたりの平均費用(80ルーブル)の積である。「非組織レジャー」支出は,前掲 V.Azar and I.Pletnikova 論文から得られる。

    2.b.(6)教育(14億4,100万ルーブル)は,所得の部4.a.(2)(d)で得られた私的に提供された教育サービス(4億7,000万ルーブル)と,公的教育費用(9億7,100万ルーブル,前掲 V.Rutgaizer 論文による)の和である。V.Rutgaizer によれば,1970年においてこの個人負担となっている公的教育費用部分は,彼のいう「総教育支出」の5%であるという。

    2.b.(7)保健(3億4,500万ルーブル)は,所得の部4.a.(2)(e)で得られた,私的に提供された保健サービス(2億5,000万ルーブル)と,両親の負担する保育園児費用(9,500万ルーブル)の和である。後者は,2.b.(5)において既に推計されている。

    3.現物消費,a.農業現物消費(183億4,700万ルーブル)は,既に所得の部2.c.(1)の項で推定されている。総額のうち,羊毛の現物消費(1億1,200万ルーブル)が3.a.(2)非耐久財に分類され,それ以外が,(1)食料(182億3,500万ルーブル)となる。

    3.b.軍人現物支給(32億ルーブル)は,所得の部3.b.で既に推定されている。その(1)食料,(2)非耐久財,への分割については,CIAの推定としか記述されていない。

    4.総消費支出(1,898億1,500万ルーブル)は,以上1−3の各項目の合計額である。

    5.投資,a.私的住宅建設(16億3,600万ルーブル)は,直接 Narkhoz からとられた。

    5.b.農業現物投資(5億9,500万ルーブル)は,所得の部2.c.(2)において,既に推計されている。

    6.総消費・投資支出(1,920億4,600万ルーブル)は,4−5の合計額である。

    7.移転支出,a.純貯蓄(97億2,000万ルーブル)は,Narkhoz から得られる貯蓄預金口座残高純増(82億300万ルーブル),Ministerstvo finansov SSSR,Gosudarstvennyi biudzhet i biudzhety soiuznykh respublik 1966-1970, statisticheskii sbornik から得られる純債券購入(4億7,000万ルーブル)と,純保険料(10億4,700万ルーブル)の,三者の合計である。純保険料は,Finansy SSSR誌から得られる保険料総額(18億2,700万ルーブル)から,同様に Finansy SSSR 誌の別号から得られる保険金受取額(7億8,000ルーブル)を控除したものである。

    7.b.直接税(127億3,700万ルーブル)は,Ministerstvo finansov SSSR,op.cit. から直接得られる。

    7.c.その他の国家に対する支払(27億300万ルーブル)は,@労働組合組合費その他会費(20億6,600万ルーブル),A純宝籤購入(2億5,400万ルーブル),B個人・協同組合によって所有されている土地への課税(2億1,100万ルーブル),C家計によって支払われるコルホーズ市場入場料(5,000万ルーブル),Dその他国民からの国家予算所得(1億2,200万ルーブル),の合計である。

    @労働組合費等は,CIA(1975)においては2.消費サービス,の中の一項目であったが,JEC(1982)では,この支出が公共部門支出の項目である社会文化活動等をまかなうために使用されることを考慮して,移転支出として計上されている。

    この項目は,労働組合費(13億7,600万ルーブル),共産党党費(3億9,000万ルーブル),およびその他の会費(3億ルーブル)の,三者の合計である。労働組合費は,推定労働組合員数,彼らの推定賃金,組合費が賃金の1%であるという仮定によって推定された。データの出所は,Narkhoz ,Sovetskye profsoiuzy,Spravochinik profsoiuznogo rabotnika 等である。共産党費は,推定党員数,彼らの賃金,会費が賃金の1.5%であることによって推定された。データの出所は,Narkhoz,Ustav kommunisticheskoi partii sovetskogo soiuza 等である。その他の会費は,直接推計することが不可能であり,やや恣意的に3億ルーブルと推定された。

    A純宝籤購入は,Finansy SSSR 誌から,またB個人・協同組合によって所有されている土地への課税は,Ministerstvo finansov SSSR,op.cit. からとられた。C家計によって支払われるコルホーズ市場入場料は,所得の部2.b.農産物販売純所得,の項目に挙げられている資料から推定された。Dその他国民からの国家予算所得は,Ministerstvo finansov SSSR,op.cit. から得られる国民からの総国家予算収入(138億4,400万ルーブル)から,以下の5項目,すなわち国民からの直接税(上記7.b.,127億3,700万ルーブル),純債券購入(4億7,000万ルーブル,上記7.a.純貯蓄,の項で得られた),純宝籤購入(上述,2億5,400万ルーブル),家計によって支払われるコルホーズ市場入場料(上述,5,000万ルーブル),個人・協同組合によって所有されている土地への課税(上述,2億1,100万ルーブル)を差し引いて求められた。

    8.総支出(2,172億600万ルーブル)は,6−7の合計額である。なお,所得の部に統計的不突合の項目があることから,家計部門勘定においては,所得よりも支出の部の信頼性が高いと考えられていることがわかる。







 
3.公共部門勘定


    (1)所得の部

    表B−2は,CIAが推計した,1970年におけるソ連公共部門の所得と支出である。家計部門と同様,各項目の推計方法とデータの出所について簡単に説明しよう。まず,所得の部である。

    1.留保純所得,a.コルホーズ留保所得(71億8,600万ルーブル)は,Ekonomika sel'skogo khoziaistva 誌から得られるコルホーズの純収入総額(80億9,700万ルーブル)と,@所得税(6億6,600万ルーブル),A利潤から支払われるコルホーズ員へのプレミア(2億2,500万ルーブル),Bその他の租税(2,000万ルーブル)の三者の合計との差額である。@所得税は,Ministerstvo finansov SSSR,op.cit.から直接得ることができる。A利潤から支払われるコルホーズ員へのプレミアは,V.N.Zhurikov and V.I.Solomakhin,op.cit. による。Bその他の租税は,N.F.Panchenko,et al.,Industrial'noe razvitie i effektivnost' kolkhoznogo proizvodstva など3種の文献から推定された。

    1.b.国営企業留保利潤(264億8,100万ルーブル)は,Narkhoz から直接得ることのできる純利潤(856億6,800万ルーブル)から,予算への控除(541億5,700万ルーブル,Ministerstvo finansov SSSR,op.cit. による)と利潤から支払われたボーナス(50億3,000万ルーブル)の合計額を差し引いて得られた。利潤から支払われたボーナスは,65年改革によって誕生した「物的刺激フォンド」から支払われたボーナスと,二つの追加的な物質的刺激フォンド,すなわち「社会主義的競争勝利のためのプレミア・フォンド」と「廃棄原材料からの消費財生産フォンド」から支払われたボーナスとの合計額である。「物的刺激フォンド」によるボーナスは,Narkhoz から得られる工業部門のデータをもとに47億3,000万ルーブルと推定された。追加的な二つのフォンドによるボーナスは,Narkhoz から得られる両基金の規模,また過去のボーナス支払い比率をもとに,3億ルーブルと推定された。

    1.c.消費者協同組合留保利潤(8億2,100万ルーブル)は,Narkhoz から直接得られる消費者協同組合純利潤(13億2,100万ルーブル)から,所得税(4億6,200万ルーブル)と従業員に支払われたプレミア(3,800万ルーブル)の合計額を差し引いて得られた。所得税は,純利潤額と,V.V.Lavrov et al.,Finansy i kredit SSSR から得られる所得税比率(35%)を使って求められた。従業員に支払われたプレミアは,やや恣意的に,Narkhoz から得られる協同組合の刺激フォンド規模(7,500万ルーブル)の半分とされた。

    1.d.その他の組織の留保利潤(3億2,100万ルーブル)は,その他の組織の純利潤(4億2,800万ルーブル)から,所得税(1億700万ルーブル)を差し引いて得られた。純利潤は,V.V.Lavrov et al.,op.cit.によれば所得税率が25%であることから,所得税額の4倍とされた。所得税は,Ministerstvo finansov SSSR,op.cit. のデータから推計された。なおその他の組織とは,主に労働組合のような,いわゆる社会組織を指す。

    2.特別基金のための企業への賦課,a.社会保険・社会保障(94億3,600万ルーブル)は,Narkhoz から直接得られる社会保険賦課による国家予算受取(83億ルーブル),コルホーズ員のための全連邦社会保険基金へのコルホーズの支払(3億5,600万ルーブル),およびコルホーズ員のための全連邦社会保障基金へのコルホーズの支払(7億8,000万ルーブル)の三者の合計額である。後二者は,Narkhoz,K.S.Kartashova,Finansy, kredit i raschety v kolkhozakh,G.Ya. Kuznetsov,Tovarnye otnosheniia i ekonomicheskie stimuly v kolkhoznom proizvodstve によって,それぞれ,総賃金フォンド(148億4,000万ルーブル)の2.4%,前年のコルホーズの総収入の4%と推定された。

    2.b.教育(4億ルーブル)は,A.S.Becker の諸研究から推定された。この場合の教育とは,労働者の訓練費用をまかなうための企業への賦課である。

    2.c.研究(25億7,800万ルーブル)は,Narkhoz から得られる国家予算その他からの科学に対する総支出(117億ルーブル)と,Ministerstvo finansov SSSR,op.cit. から得られる科学向けの国家予算の配分(65億4,300万ルーブル)との差の半額として,やや恣意的に推定された。

    2.d.社会文化・スポーツ活動(1億6,200万ルーブル)は,社会文化・スポーツ活動を支援するために労働組合に支払われる基金を意味するが,独立採算企業の総賃金の0.15%と推定された。独立採算企業の総賃金は,表B−1,所得の部1.国家賃金,から,保健,教育,政府行政サービス,科学の一部の賃金を控除して求められた。

    2.e.軍事警察(8億8,000万ルーブル)は,表B−2,支出の部,2.d.(3)警察(17億6,100万ルーブル)の半額と推定された。軍事警察の仕事のかなりの部分は,特別国有地や通常の企業で特別契約に基づいて働く囚人の監視であると考えられる。

    2.f.上級管理機関維持(10億6,500万ルーブル)は,国家行政への総支出(34億5,800万ルーブル)の30.8%と推定された。国家行政への総支出は,表B−2,支出の部,2.c.国家行政と社会組織の行政機関(38億2,100万ルーブル)の90.5%と推定された。90.5%という数字は,Trud v SSSR における,社会組織の行政機関の雇用者数(雇用者という言葉は,本来雇主を意味すると考えられるが,本稿では被雇用者の意味でこの言葉を用いる。これは,SNAにおける慣行である)が,総行政機関雇用者の9.5%であるというデータに基づく。また30.5%という数字は,これも Trud v SSSR における過去の,国家行政機関雇用者数に占めるトラスト等の上級経済管理機関雇用者数の比率をもとに推計された。

    3.税その他予算への支払,a.コルホーズ所得税(6億6,600万ルーブル)は,上記1.a.コルホーズ留保所得,の項で既に求められている。

    3.b.消費者協同組合所得税(4億6,200万ルーブル)は,上記1.c.消費者協同組合留保利潤,の項で既に求められている。

    3.c.その他の組織の所得税(1億700万ルーブル)は,上記1.d.その他の組織の留保利潤,の項で既に求められている。

    3.d.国営企業利潤控除(531億1,000万ルーブル)は,上記1.b.国営企業留保利潤,の項で求められた予算への利潤控除総額(541億5,700万ルーブル)と,表B−1,支出の部7.a.純貯蓄,の項で求められた家計の純保険料(10億4,700万ルーブル)との差額である。A.S.Becker によれば,国営保険機関(ゴスストラフ)の純受取の大部分は,利潤として国家予算に納入されるという。

    3.e.取引税(533億4,600万ルーブル)は,Ministerstvo finansov SSSR,op.cit. から得られた。

    3.f.雑賦課(243億8,600万ルーブル)は,経常的な生産活動からの分類不詳の予算収入と,幾種類かの確認済みの雑収入とから成る。基本的なデータは,主としてMinisterstvo finansov SSSR,op.cit. からとられた。主な雑収入は,外国貿易からの収入(75億8,100万ルーブル),貨幣供給からの収入(20億ルーブル)である。

    4.損失補助手当(-225億5,300万ルーブル)は,いわゆる補助金である。これは,次の10種類の補助金の合計額である。@工業による農産物調達の際の価格差補助(135億8,000万ルーブル),A総取引税からの支払い(39億6,600万ルーブル),B小売商業における価格引き下げを補填するための予算からの支払(4億ルーブル),C加工飼料補助(4億7,500万ルーブル),D化学肥料補助(3億6,500万ルーブル),E農業機械・設備補助(4億3,200万ルーブル),F住宅補助(20億8,600万ルーブル),G新聞・雑誌・出版への予算配分(1億2,000万ルーブル),H芸術・ラジオ放送補助(6億2,800万ルーブル),Iレクリエーション補助(5億100万ルーブル)。

    @工業による農産物調達の際の価格差補助,は,政府調達機関が農業生産者から購入した農産物をその加工部門や商業機関に再販売する際の,逆ざやの補助金である。Narkhoz, Finansy SSSR, Sel'skoe khoziaistvo, Gosudarstbvennyi piatiletnii plan 1971-1975, V.G.Treml,Agricultural Subsidies in the Soviet Union 等各種の資料から推計されている。A総取引税からの支払い,は,Ministerstvo finansov SSSR,op.cit. の総取引税と純取引税の差額である。Bの小売商業機関への補助金は,Finansy SSSR から推定された。CDEの各種補助金は,V.G.Treml,Price Indexes for Soviet 18-Sector Input-Output Tables,1959-1975 から得られた。Fの住宅への補助は,Narkhoz から得られる全国住宅有効面積(10億4,300平米)に,平米あたり2ルーブルの推定国家補助金を掛けて算出された。この2ルーブルという金額は,Voprocy ekonomiki 誌からとられた。その他の補助金については,Narkhoz 等から得られた。

    5.減価償却を除く総賦課(1,588億5,400万ルーブル)は,上記1−4の合計である。

    6.減価償却(318億2,700万ルーブル)は,Narkhoz から得られる国営・協同組合組織の減価償却引当(291億500万ルーブル),および Z.I.Kravchenko,Proizvodstvennye fondy v kolkhozakh i sovkhozakh から得られるコルホーズにおける減価償却引当(27億2,200万ルーブル)の合計額である。

    7.総賦課(1,906億8,100万ルーブル)は,上記5−6の合計である。

    8.移転受取(251億6,000万ルーブル)は,表B−1,支出の部7.移転支出,を参照。

    9.総所得(2,158億4,100万ルーブル)は,上記7−8の合計である。







 
3.公共部門勘定


    (2)支出の部

    1.共同サービス,a.教育(129億3,900万ルーブル)は,賃金(94億ルーブル),社会保険(5億1,700万ルーブル),およびその他の経常支出(39億9,300万ルーブル)の三者の合計から,両親の教育費負担(9億7,100万ルーブル)を差し引いた金額である。

    賃金は,Narkhoz から得られる雇用者数(720万6,000人)に,これも Narkhoz から得られる平均賃金(月当たり108.1ルーブル)を掛けたものである。社会保険は,賃金の5.5%として計算された。5.5%という比率は,Spravochnik partiinogo rabotnika から得られた。その他の経常支出は,Ministerstvo finansov SSSR,op.cit. の数字をもとに推計された。両親の教育費負担は,表B−1,支出の部,2.b.(6)教育,の項で求められた。

    1.b.保健(82億6,800万ルーブル)は,賃金(50億400万ルーブル),社会保険(2億7,500万ルーブル),およびその他の経常支出(30億8,400万ルーブル)の三者の合計から,両親の保健負担(9,500万ルーブル)を差し引いた金額である。これらの構成要素は,次項c.運動文化,の構成要素とともに推計された。基礎となるデータは,Narkhoz からとられているが,労働支出以外の支出の総支出に占める割合36.9%がどのようにして導出されたかは,説明されていないように思われる。

    1.c.運動文化(6,100万ルーブル)は,V.Cai-Pinna and S.S.Shatalin,Consumption Expenditures in Eastern and Western Europe から得られる1969年に関する5,300万ルーブルという支出総額と,Narkhoz から得られる同年の予算からの支出(4,100万ルーブル)との関係を,1970年にも適用して得られた。1970年の予算支出は,Narkhoz から4,700万ルーブルであるので,同年の総額は,6,100万ルーブルとなる。

    2.政府行政サービス,a.総合農業プログラム(10億400万ルーブル)は,動物や植物の病気予防,獣医サービス,種子検査,土壌改良サービス等に対する支出額であるが,賃金(7億2,100万ルーブル),社会保険控除(3,200万ルーブル),およびその他の経常支出(2億5,100万ルーブル)の三者の合計として求められた。賃金は,Narkhoz から得られる,国家農業部門の雇用者数,平均賃金に関するデータと,ソフホーズその他国営企業における雇用者数,平均賃金に関するデータから得られる両部門の賃金の差額として求められた。社会保険は,賃金の4.4%として計算された。4.4%という数字は,Spravochnik partiinogo rabotnika から得られた。その他の経常支出は,総支出の四分の一と仮定された。総合農業プログラム部門における「その他の経常支出」部分の比率(25%)は,食料コストが大きな割合を占める上記1.a.教育部門(31%),b.保健部門(37%)よりは,大分小さいと推定される。

    2.b.林業(6億3,600万ルーブル)は,賃金(4億5,700万ルーブル),社会保険控除(2,000万ルーブル),およびその他の経常支出(1億5,900万ルーブル)の三者の合計である。賃金は,Narkhoz から得られる雇用者数(433,000人)と,G.I.Vorob'ev et al.,Lesnoe khoziaistvo SSSR から得られる月当たり平均賃金(88ルーブル)とから計算された。社会保険は,賃金の4.4%として計算された。4.4%という数字は,Spravochnik partiinogo rabotnika から得られた。その他の経常支出は,総支出の四分の一と仮定された。

    2.c.国家行政と社会組織の行政機関(38億2,100万ルーブル)は,賃金(27億1,700万ルーブル),社会保険控除(1億4,900万ルーブル),およびその他の経常支出(9億5,500万ルーブル)の,三者の合計である。賃金は,Narkhoz から得られる雇用者数(1,838,000人)と月当たり平均賃金(123.2ルーブル)とから計算された。社会保険は,賃金の5.5%として計算された。5.5%という比率は,Spravochnik partiinogo rabotnika から得られた。その他の経常支出は,総支出の四分の一と仮定された。

    2.d.地方関連サービス,(1)文化(11億8,000万ルーブル)は,賃金(8億3,900万ルーブル),社会保険控除(4,600万ルーブル),およびその他の経常支出(2億9,500万ルーブル)の,三者の合計である。賃金は,Narkhoz から得られる雇用者数(824,000人)と月当たり平均賃金(84.8ルーブル)とから計算された。社会保険は,賃金の5.5%として計算された。5.5%という比率は,Spravochnik partiinogo rabotnika から得られた。その他の経常支出は,総支出の四分の一と仮定された。

    2.d.(2)地方サービス(6億2,800万ルーブル)は,賃金(4億5,000万ルーブル),社会保険控除(2,100万ルーブル),およびその他の経常支出(1億5,700万ルーブル)の,三者の合計である。賃金は,雇用者数(397,000人)と,月当たり平均賃金(94.5ルーブル)とから計算された。雇用者数は,Narkhoz から得られる住宅・共同経済部門の雇用者数(3,052,000人)の13%と推定された。月当たり賃金は,やはり Narkhoz から得られる住宅・地域経済部門の月当たり平均賃金と同一であると仮定された。社会保険は,賃金の4.7%として計算された。4.7%という比率は,Spravochnik partiinogo rabotnika から得られた。その他の経常支出は,総支出の四分の一と仮定された。

     2.d.(3)警察(17億6,100億ルーブル)は,賃金(12億3,500万ルーブル),社会保険控除(8,600万ルーブル),およびその他の経常支出(4億4,000万ルーブル)の,三者の合計である。賃金は,雇用者数(675,000人)と,推定月当たり平均賃金(152.5ルーブル)とから計算された。雇用者数は,Narkhoz から得られる「その他の物的生産部門」雇用者数(998,000人)の67.6%と仮定された。また警察部門の月当たり平均賃金は,すべての国家労働者・従業員の平均(122.0ルーブル)よりも25%高いとして推計された。社会保険は,賃金の7.0%として計算された。その他の経常支出は,総支出の四分の一と仮定された。

    3.総投資,a.固定資本,(1)新規固定投資,(a)機械・設備(260億5,300万ルーブル)は,新規機械・設備固定投資(253億ルーブル),未据付設備倉庫在庫(-1億3,700万ルーブル)および予算機関による設備の取得(8億9,000万ルーブル)の三者の合計である。新規固定投資は,Narkhoz において,資本投資の中の「設備・器具・在庫」として計上されている。これは,1969年見積価格表示であるが,そのまま1970年の支出額と見なすこととした。未据付設備倉庫在庫は,Material'no-tekhnicheskoe snabzhenie 誌の1969年末と1970年末の評価額(それぞれ50億1,700万ルーブル,48億8,000万ルーブル)の差である。予算機関による設備の取得は,ソ連の投資データに含まれていない。そこで,Ministerstvo finansov SSSR,op.cit. における連邦共和国レベルのこの項目の支出額(6億5,060万ルーブル)が,連邦全体の支出の73.1%であるとして推計された。73.1%という値は,Ministerstvo finansov SSSR,op.cit. における,教育,文化,保健,運動文化,科学,行政に対する総支出の,共和国レベルの支出と連邦全体の支出との比から導かれた。

    3.a.(1)(b)建設その他資本支出(581億6,400万ルーブル)は,建設総支出およびその他の資本支出(598億ルーブル)と,私的住宅建設(16億3,600万ルーブル)の差として求められた。建設総支出およびその他の資本支出は,Narkhoz から得られる建設部門の総生産(676億ルーブル)から,建物・構築物の大修理推定額(78億ルーブル)を差し引いて求められた。後者の推計については,第W章,2.(2)投資,の項を参照のこと。私的住宅建設は,表B−1,支出の部,5.a.私的住宅建設,の項で既に求められている。

    3.a.(1)(c)家畜純増(37億7,200万ルーブル)は,表B−1,所得の部,2.c.(2)現物投資,と同様の方法で求められた。つまり,牛,豚,羊・山羊,家禽の増加数に,それぞれ適当な評価価格を掛けて算出された。データの出所は,Narkhoz,Sel'skoe khoziaistvo 等である。

    3.a.(2)大修理(190億ルーブル)は,Z.I.Kravchenko,op.cit. から得られるコルホーズによる大修理支出(9億1,800万ルーブル),Narkhoz から得られる大修理向け減価償却引当(146億6,300万ルーブル),および大修理のための予算支出(34億1,900万ルーブル)の合計である。大修理のための予算支出については,Ministerstvo finansov SSSR,op.cit. によって得られる共和国レベルの大修理予算支出(24億9,930万ルーブル)は,連邦全体の支出の73.1%とであると仮定して,上記34億1,900万ルーブルという値が得られた。73.1%という比率は,上記3.a.(1)(a)の項で求められたものである。

    3.b.在庫(151億5,400万ルーブル)は,コルホーズを除く公共部門在庫増(149億1,000万ルーブル)とコルホーズ在庫増(2億4,400万ルーブル)の合計である。コルホーズを除く公共部門在庫増は,1969年末と1970年末の在庫残高(それぞれ1,528億7,600万ルーブル,1,677億8,600万ルーブル)の差額である。各年末の在庫残高は,総流動資本残高から,金融資産と家畜の残高を控除することによって求められた。これらのデータはすべて,Narkhoz から得ることができる。コルホーズ在庫増も同様に,各年末の在庫残高(1969年末は96億5,600万ルーブル,1970年末は99億ルーブル)の差額である。データは,V.V.Kochkarev,Oborotnye sredstva kolkhozov から得られた。

    4.研究開発(103億4,300万ルーブル)は,賃金(50億2,000万ルーブル),社会保険控除(2億7,600万ルーブル),減価償却(1億6,500万ルーブル),利潤(9,400万ルーブル),特別基金のための賦課(3億2,500万ルーブル),および物的支出(44億6,300万ルーブル)の6項目の合計である。

    賃金は,ともに Narkhoz から得られる雇用者数(2,999,000人)と,月当たり平均賃金(139.5ルーブル)から計算された。社会保険控除は,賃金の5.5%として計算された。5.5%という比率は,Spravochnik partiinogo rabotnika から得られた。減価償却は,Narkhoz から推計される総減価償却から,Yu.V.Peshekhonov,ed.,Razvitie i finansirovanie obshchestvennykh fondov potrebleniia から得られる住宅に関する減価償却を差し引いた額である。利潤は,利潤総額から,ボーナス支払いを除いた額である。Narkhoz のデータから推計された。特別基金のための賦課は,出所不詳。物的支出は,V.M.Rutgaizer,Resursy razvitiia neproizvodstvennoi sfery から推計された。

    5.その他の支出,a.純輸出(9億6,100万ルーブル)は,いずれも Narkhoz から得られる外国貿易価格で評価された総輸出と総輸入の差額である。

    5.b.防衛その他の支出および統計的不突合(274億6,800万ルーブル)は,下記8.総支出と,上記1−4,5.a.,および下記7の合計の差額である。

    6.家計への販売を除く財・サービス総額(1,912億1,300万ルーブル)は,上記1−5の合計である。

    7.移転支出(246億2,800万ルーブル)については,表B−1,所得の部,8.移転受取,の項とまったく同一である。

    8.総支出(2,158億4,100万ルーブル)は,表B−2,所得の部,9.総所得,に等しい。なお,支出の部に統計的不突合の項目があることから,公共部門勘定については,支出よりも所得の部の信頼性が高いと考えられていることがわかる。







 



    4.最終需要別GNP

    表B−3は,現行価格表示の最終需要別のGNPである。最終需要別GNPは,家計・公共両部門勘定の支出の部から導出される。各項目の出所について,簡単に述べよう。

    1.消費,a.財,(1)食料は,表B−1,支出の部,1.a.(1),1.b.(1),3.a.(1),3.b.(1)の合計である。

    1.a.(2)非耐久財は,表B−1,支出の部,1.a.(2),1.b.(2),3.a.(2),3.b.(2)の合計である。

    1.a.(3)耐久財は,表B−1,支出の部,1.a.(3)である。

    1.b.サービス,(1)住宅は,表B−1,支出の部,2.a.である。

    1.b.(2)公益は,表B−1,支出の部,2.b.(1)である。

    1.b.(3)運輸は,表B−1,支出の部,2.b.(2)である。

    1.b.(4)通信は,表B−1,支出の部,2.b.(3)である。

    1.b.(5)修理・個人日用は,表B−1,支出の部,2.b.(4)である。

    1.b.(6)レクリエーションは,表B−1,支出の部,2.b.(5)と,表B−2,支出の部,1.c.の合計である。

    1.b.(7)教育は,表B−1,支出の部,2.b.(6)と,表B−2,支出の部,1.a.の合計である。

    1.b.(8)保健は,表B−1,支出の部,2.b.(7)と,表B−2,支出の部,1.b.の合計である。

    2.投資,a.新規固定投資,(1)機械設備は,表B−2,支出の部,3.a.(1)(a)である。

    2.a.(2)建設その他資本投資は,表B−1,支出の部,5.a.と,表B−2,支出の部,3.a.(1)(b)の合計である。

    2.a.(3)家畜純増は,表B−1,支出の部,5.b.と,表B−2,支出の部,3.a.(1)(c)の合計である。

    2.b.大修理は,表B−2,支出の部,3.a.(2)である。

    2.c.在庫は,表B−2,支出の部,3.b.である。

    3.その他の公共部門支出,a.政府行政サービスは,表B−2,支出の部,2.である。

    3.b.研究開発は,表B−2,支出の部,4.である。

    3.c.その他の支出は,表B−2,支出の部,5.である。

    4.GNPは,上記1−3の合計である。





     



      5.所得種類別GNP

      表B−4は,現行価格表示の所得種類別のGNPである。所得種類別GNPは,家計・公共両部門勘定の所得の部から導出される。各項目の出所について,簡単に述べよう。

      1.賃金,a.国家賃金は,表B−1,所得の部,1.である。

      1.b.軍人給与は,表B−1,所得の部,3.a.である。

      2.その他の所得と帰属所得,a.農業からの家計純所得は,表B−1,所得の部,2.

      である。

      2.b.軍人現物支給は,表B−1,所得の部,3.(b)である。

      2.c.その他の貨幣所得と統計的不突合は,表B−1,所得の部,4.である。

      2.d.帰属純家賃は,表B−1,所得の部,5.である。

      2.e.持ち主が提供した建設サービスの帰属価値は,表B−1,所得の部,6.である。

      2.f.特別基金のための企業への賦課は,表B−2,所得の部,2.b.,2.c.,2.d.,2.e.,2.f.の合計である。

      3.社会保険は,表B−2,所得の部,2.a.である。

      4.利潤,a.国営企業,(1)国営企業留保利潤は,表B−2,所得の部,1.b.である。

      4.a.(2)国営企業利潤控除は,表B−2,所得の部,3.d.である。

      4.b.コルホーズ,(1)コルホーズ留保利潤は,表B−2,所得の部,1.a.である。

      4.b.(2)コルホーズ所得税は,表B−2,所得の部,3.a.である。

      4.c.消費者協同組合,(1)消費者協同組合留保利潤は,表B−2,所得の部,1.c.である。

      4.c.(2)消費者協同組合所得税は,表B−2,所得の部,3.b.である。

      4.d.その他の組織,(1)その他の組織の留保利潤は,表B−2,所得の部,1.d.である。

      4.d.(2)その他の組織の所得税は,表B−2,所得の部,3.c.である。

      5.減価償却は,表B−2,所得の部,6.である。

      6.取引税およびその他の間接税,a.取引税は,表B−2,所得の部,3.e.である。

      6.b.雑賦課は,表B−2,所得の部,3.f.である。

      7.損失補助手当は,表B−2,所得の部,4.である。

      8.GNPは,上記1−7の合計である。







     
    6.発生部門別GNP


    表B−5は,現行価格表示の付加価値発生部門別のGNPである。各項目の算定方法について,簡単に述べよう。

      (1)G N P

      表B−5,第(1)列に示されている。第(2)列から第(8)列までの合計である。







     
    6.発生部門別GNP


      (2)賃  金

      表B−5,第(2)列に示されている。次のようなステップによって推計された。

      @各部門について,未修正の国家賃金データを集める。

      国家賃金の総額は,表B−4,1.による。サービス部門および政府行政サービス部門の賃金は,それぞれの内訳の合計として得られる。軍人部門の賃金は,表B−4,1.b.による。

      工業部門の賃金は,総額,内訳とも基本的に,Vestnik statistiki 誌による。ただし工業部門中の,燃料,非鉄の各部門については,S.Rapawy,Civilian Employment in the USSR,および1959年・1966年・1972年IO表から推計された。その他の工業部門の賃金は,残余として推計された。工業以外の各部門の賃金は,基本的に,Narkhoz から得られる各部門の雇用者数と平均賃金とから計算された。ただし「その他の(物的生産)部門」の賃金は,残余として推計された。

      しかし以上の NarkhozVestnik statistiki による部門分類の一部は,CIAによる分類と一致しない。CIA分類にあってソ連の分類にない部門は,サービス部門中の公益,修理・個人日用両部門,同じくサービス部門中の政府行政サービスの中の地方サービス,警察の両部門である。したがって,基本的にソ連統計を使うと,これらの部門の賃金はゼロということになる。一方,ソ連の分類にあってCIA分類にない部門は,上で述べた「その他の物的生産部門」である。またいくつかの部門については,CIA分類とソ連分類とでカバレッジが一致しない場合がある。このため,以上で得た賃金データに,以下のステップの修正が必要となる。

      Aまず最初に,修理・個人日用部門に関する修正である。ソ連の統計では,修理やオーダーメイドは生産的活動と見なされ,したがってそれに対応する工業部門の活動の一部となっている。たとえば,耐久財の修理等は機械部門の,靴の修理等は軽工業部門の生産活動となっている。これらの活動に従事する雇用者数は,Vestnik statistiki から得られるので,それに,Narkhoz から得られる各部門の平均賃金を掛けて修理等の活動に従事する労働者の賃金とし,その合計を修理・個人日用部門の賃金とする。一方それらの賃金は,工業の各部門から差し引かれる。@で得られた未修正の賃金からそれらを差し引かれる部門は,機械,製材・パルプ・製紙,軽工業,その他の工業の4部門である。

      Bソ連統計における住宅・地域経済部門は,CIA分類の住宅部門と一致しない。住宅・地域経済部門には,CIA分類の住宅,地方サービス,レクリエーション,修理・個人日用,公益の各部門の活動が含まれている。これらの各部門の雇用者数を Vestnik statistiki,V.P.Korchagin and L.S.Sbytova,Sfera uslug i zaniatost' naseleniia 等各種の資料から推定し,それに Narkhoz から得られる住宅・地域経済部門の平均賃金を掛けて,各部門の賃金,あるいはその追加分とした。なお公益部門の賃金には,住宅・地域経済部門の賃金の残余が割り振られた。

      Cソ連統計の保健部門には,リゾートやサナトリウムでの運動に関わる労働が含まれているが,これはCIA分類でいえばレクリエーション部門の活動に属するものである。したがってその分の賃金が,保健部門からレクリエーション部門に移される。金額は,表B−2,支出の部,1.b.保健の項を推定する際に求められている。

      Dソ連統計の「その他の物的生産部門」には,軍事警察と警察の活動が含まれていると考えられる。表B−2,支出の部,2.d.(3)の項で推定された賃金が,警察部門の賃金として割り与えられた。なお,JEC(1982,p.145)のTable,D−8の,その他の部門の行,警察の列の数字に,マイナス符号が落ちている。

      Eソ連統計の運輸部門には,経済の他の部門の企業に付随するトラック輸送機関の労働が含まれている。この部分を,米国の慣例にならって,他の諸部門に割り振る。1966年・1972年IO表等の資料に基づいて,工業,建設,農業,商業の諸部門に属すべき雇用者数を推定し,それに Narkhoz から得られるこの種の労働の平均賃金を掛けてそれぞれの賃金を推計し,各部門の賃金に追加した。工業部門内では,追加賃金は各部門の賃金に比例するような形で割り振られている。

      F以上のA−Eの修正を@で得られた未修正賃金に施して,得られたのが,表B−5,第(2)列の賃金である。







     
    6.発生部門別GNP


      (3)その他の所得と帰属所得

      表B−5,第(3)列に示されている。次の7項目の合計として求められた。

      @社会文化・スポーツ活動。総額は,表B−2,所得の部,2.d.において,独立採算企業の賃金の0.15%として求められている(独立採算企業の賃金は,表B−2,所得の部,2.d.の項に記したように,国家賃金から,教育,保健,政府行政サービスの賃金と,科学部門の賃金の一部を控除したものである)。各部門の社会文化・スポーツ活動の価値も同様に,各部門の賃金の0.15%として計算された。

      A軍事警察。総額は,表B−2,所得の部,2.e.において求められている。この金額は,軍事警察を雇う可能性の高い物的生産分野,すなわち工業,建設,農業,運輸,通信,および商業の各分野に,それぞれの賃金に比例する形で割り振られた。

      B上級管理機関維持。総額は,表B−2,所得の部,2.f.において求められている。この金額が,上記@と同様,独立採算企業の賃金に比例する形で各部門に割り振られた。

      C教育。総額は,表B−2,所得の部,2.b.で求められている。この金額が,上記@と同様,独立採算企業の賃金に比例する形で各部門に割り振られた。

      D研究。総額は,表B−2,所得の部,2.c.で求められている。この金額が,上記Aと同様,物的生産部門に,それぞれの賃金に比例する形で割り振られた。

      Eその他の確認済み所得。これは,CIAによって推計された,各部門の帰属所得や私的稼得等である。まず建設部門の所得として,表B−1,所得の部,4.a.(1)建設による私的稼得,および表B−1,所得の部,6.持ち主が提供した建設サービスの帰属価値の合計金額が加算された。農業部門の所得として,表B−1,所得の部,2.農業からの家計純所得が加算された。住宅部門の所得として,表B−1,所得の部,4.a.(2)(a)住宅修理,および表B−1,所得の部,5.帰属純家賃の合計金額が加算された。修理・個人日用部門の所得として,表B−1,所得の部,4.a.(2)b.その他の私的修理・個人日用サービスの金額が加算された。レクリエーション部門の所得として,表B−1,所得の部,4.a.(2)(c)私的な部屋の賃貸の金額が加算された。教育部門の所得として,表B−1,所得の部,4.a.(2)(d)教育の金額が加算された。保健部門の所得として,表B−1,所得の部,4.a.(2)(e)保健の金額が加算された。最後に,軍人部門の所得として,表B−1,所得の部,3.b.軍人現物支給の金額が加算された。

      F未確認貨幣所得。総額は,表B−1,所得の部,4.b.において求められている。これが,各部門の賃金に比例する形で各部門に割り当てられている。

      以上のような手続によって,表B−5,第(3)列の,その他の所得と帰属所得が求められた。







     
    6.発生部門別GNP


      (4)社会保険控除

      社会保険控除の導出過程は,基本的に上記(2)賃金とまったく同一である。つまり,まず最初に未修正の各部門ごとの社会保険控除額を求め,それに,(2)賃金の項のA−Eの修正と同様の修正を加えて妥当な社会保険控除額を得る。最初のステップである未修正の社会保険控除額は,各部門の賃金と,その部門ごとの社会保険料率との積として求められる。未修正の賃金は既に,上記(2)賃金の@で推計されている。また,各部門の社会保険料率は,Spravochnik partiinogo rabotnikaによって知ることができる。こうして,表B−5,第(4)列の,社会保険控除が求められた。







     
    6.発生部門別GNP


      (5)減価償却

      減価償却は,表B−5第(5)列に示されている。このうち減価償却総額は,既に表B−2,所得の部,6.で求められている。工業各部門の減価償却は,基本的に次のような手順で求められた。C.B.Krueger,USSR: Gross Fixed Capital から得られる工業各部門の1970年の平均固定資本額に,Narkhoz から導かれる減価率を掛ける。こうして得られる工業部門全体の減価償却は,さらに Narkhoz とP.I.Vakhrin,Formirovanie osnovnykh fondov kooperativnoi torgovli とから得られる実際の引当額を上回っているので,各部門の減価償却を同一の率で縮小して,合計が実際の額となるよう調整された。

      建設部門の減価償却は,Narkhoz から得られる建設部門減価償却と,P.I.Vakhrin,op.cit. から推計される消費者協同組合の減価償却の合計である。消費者協同組合は,主として小売商業活動に従事するが,実際他の部門に属する経済活動も行っているのである。農業部門の減価償却は,Narkhoz の農業部門,P.I.Vakhrin,op.cit. による消費者協同組合,さらにZ.I.Kravchenko,op.cit. によるコルホーズ,各部門の減価償却の合計である。通信部門の減価償却は,同部門の1970年の平均固定資本の6.8%と推定された。運輸部門の減価償却は,Narkhoz 等のデータから推計された。

      商業部門の減価償却は,小売商業部門,供給・販売部門,農業調達部門,消費者協同組合の商業活動部門のそれぞれの部門の減価償却の合計である。データの出所は,Narkhoz およびP.I.Vakhrin,op.cit. である。サービスに属する各部門の減価償却は,基本的にその部門の固定資本に基づく。

      このようにして得られた減価償却には,各部門のそれぞれに若干の住宅に関する減価償却が含まれている。この部分を各部門の減価償却から控除し,それを一括して住宅部門の減価償却とする。住宅の減価償却総額は,Yu.V.Peshekhonov,ed.,op.cit. から得られる。また各部門の住宅減価償却は,それぞれの雇用者数に比例すると仮定されている。このようにして住宅に関する減価償却の調整がなされた数字が,表B−5,第(5)列である。なお前述したとおり,減価償却は,独立採算企業部門のみについて計算されている。







     
    6.発生部門別GNP


      (6)利  潤

      利潤の総額は,既に表B−4,4.で求められているが,その各部門の内訳は,次の4つのステップから求められた。

      @まず,未修正利潤額の算出である。未修正利潤の総額は,Narkhoz から得られる利潤額から,Finansy SSSR 誌から推計される純保険料を差し引いて求められる。また各部門の未修正利潤額は,以下の例外を除いて Narkhoz から得られる。

      非鉄部門の利潤は,Narkhoz から得られる1971年の製鉄部門の利潤と,N.G.Sycheva,ed.,Financy predpriiatii i otraslei narodnogo khoziaistva から得られる1971年の製鉄・非鉄両部門の合計利潤の比率を,1970年にあてはめ,Narkhoz から得られる同年の製鉄部門の利潤から推計した。電力部門の利潤には,Narkhoz の地域経済部門の利潤から推計された都市電力システムの利潤が含まれる。機械,製材・パルプ・製紙,軽工業,その他の工業の各部門から若干の額が控除され,修理・個人日用サービス部門の利潤とされた。それら金額はやや恣意的である。さらにその修理・個人日用サービス部門の利潤に,地域経済部門から若干の額が加えられた。通信部門の利潤は,TsSU,Transport i sviaz' SSSR, statisticheskii sbornik による。運輸部門の利潤は,Narkhoz における運輸・通信部門の利潤から上で求めた通信部門の利潤を控除し,さらに地域経済部門から推計された利潤額を加算した額である。商業部門の利潤は,Narkhoz の,商業,供給・販売,農業調達の合計である。公益部門の利潤には,Narkhoz の地域経済部門から推計された利潤が含まれる。科学,信用・保険,「その他」の各部門の利潤額は,Narkhoz の「その他の部門」からやや恣意的に推定された。

      A次に未修正利潤額から,各刺激フォンドの原資として組み込まれ,ボーナスとして支給される部分が控除され,「純利潤」が求められる。これらのボーナスは,既に国家賃金に含まれており,二重計算を避けるためここで控除される。各部門のボーナスは,Narkhozから推計される。

      B求められた「純利潤」は,工業各部門については省ベースの利潤額であるので,これを,V.D.Berkin,ed.,Model' "dokhod-tovary" i balans narodnogo khoziaistva による比率を使って,商品ベースの利潤額に変更する。利潤の総額に変化はない。

      Cこうして求められた調整「純利潤」額に,さらに三部門に次のような追加を行う。すなわち農業部門に対して,表B−2,所得の部1.a.コルホーズ留保利潤,および表B−2,所得の部,3.a.コルホーズ所得税の合計金額を,商業部門に対して,表B−2,所得の部,1.c.消費者協同組合留保利潤,および表B−2,所得の部,3.b.消費者協同組合所得税の合計金額を,さらにレクリエーション部門に対して,表B−2,所得の部,1.d.その他の組織の留保利潤,および表B−2,所得の部,3.c.その他の組織の所得税の合計金額を追加する。こうして得られたのが,表B−5,第(6)列の利潤である。







     
    6.発生部門別GNP


      (7)取引税その他の間接税

      この項目は,表B−6に示したとおり,@取引税,Aその他の確認された間接税,B外国貿易からの収入,Cその他の雑賦課,の合計である。

      @取引税の総額(533億4,600万ルーブル,表B−6,第(1)列)は,表B−2,所得の部,2.e.で既に求められている。取引税は,非鉄を除く工業部門にのみ課せられる。各部門の内訳は,おもに二つの文献による。機械,軽工業,食品工業,および燃料部門のうちの石油生産については,P.E.Kuchkin and N.N.Morozov,Chistyi dokhod sotsialisticheskogo obshchestva による。また製鉄,電力,製材・パルプ・製紙,建設資材,および燃料部門のうちのガス生産部分については,A.Tret'iakova,Nalog s oborota v 1972 からとられている。また,化学部門から徴収される取引税は,全体の1%と仮定されている。その他の工業部門は,残余である。

      Aその他の間接税(総額18億4,500万ルーブル,表B−6,第(2)列)は,機械部門,製材・パルプ・製紙部門,農業部門,および住宅部門に対する間接税の合計である。

      B外国貿易からの所得(総額75億8,100万ルーブル,表B−6,第(3)列)は,外国貿易ルーブルによって評価された1970年の外国貿易推計と,IO部門分類による外国貿易価格と国内価格の交換レートに基づいている。その際に,Treml and Kostinsky,The Domestic Value of Foreign Trade: Exports and Imports in the 1972 Input-Output Table による手続および変換レートが利用された。

      Cその他の雑賦課(149億6,000万ルーブル,表B−6,第(4)列)は,表B−2,所得の部,3.f.雑賦課(243億8,600万ルーブル)から,上記のAとBの金額を差し引いた額である。この金額は,各部門の付加価値からこの項目を引いた金額に比例するよう全部門に配分された。

      このようにして,表B−6,第(5)列,あるいは表B−5,第(7)列の,取引税その他間接税が求められた。







     
    6.発生部門別GNP


      (8)補 助 金

      総額およびその内訳は,表B−6に示したとおりであり,既に表B−2,所得の部,4.の項で求められている。そこで説明された10項目の補助金は,次のように各部門に配分された。

      @工業による農産物調達の際の価格差補助(135億8,000万ルーブル)は,軽工業(13億4,000万ルーブル),食品工業(121億1,000万ルーブル),および商業(1億3,000万ルーブル)に配分された。A総取引税からの支払い(39億6,600万ルーブル)は,内容が主として子供用の洋服であるため軽工業に配分された。B小売商業における価格引き下げを補填するための予算からの支払(4億ルーブル)は,商業に配分された。C加工飼料補助(4億7,500万ルーブル)は,その他の工業に配分された。D化学肥料補助(3億6,500万ルーブル)は,化学部門に配分された。E農業機械・設備補助(4億3,200万ルーブル)は,機械部門に配分された。F住宅補助(20億8,600万ルーブル)は,住宅部門に配分された。G新聞・雑誌・出版への予算配分(1億2,000万ルーブル)は,その他の部門に配分された。H芸術・ラジオ放送補助(6億2,800万ルーブル)は,通信(3億7,000万ルーブル),およびレクリエーション部門(2億5,800万ルーブル)に配分された。Iレクリエーション補助(5億100万ルーブル)はレクリエーション部門に配分された。

      こうして,表B−6,第(6)列,あるいは表B−5,第(8)列が得られた。