1.本稿の目的

一橋大学経済研究所の中核的拠点形成プロジェクト(略称「拠点プロ」)がめざすのは、 それ自身として斉合性(consistency)を保つと同時に、異なる地域間もしくは異なる時代間で相互に比較可能で、しかもできるだけ長期間にわたる長期経済統計(Long-term Economic Statistics, LTESともいう)を作成し、 これを全世界に提供することである。

本稿は、この企画の意義(「何のために?」)を明らかにすると同時に、その限界をも明確にし、そのうえで、上述の経済史統計編成方法の大綱を述べようとする。あたかも初心者が先輩諸氏の手をひこうとするごとき試みである。僭越だが、まずは自分自身の頭の整理のために、しかし出来得べくんばプロジェクト共通の土俵づくりを念願して記した心おぼえ、とでもいった方がよかろう。

なお、農業生産、国際貿易、金融制度、商品分類、およびデータファイル作成方法については、それぞれ独立の手引きを用意する予定がある(農業生産については、川越(1996))を見られよ)。